第101章

北条睦月がやって来た。

「藤堂さんはどうしたんですか? 何やら慌てた様子でしたけど、挨拶しても無視されてしまって」

薄井宴は保温弁当箱を北条睦月の腕に押し付けた。

「タバコを吸ってくる!」

そう言い捨て、怒ったように去って行った。

北条睦月は呆然とする。「どうしたんだ? 一人は慌てふためいて、もう一人はこの世の終わりのような顔をして。喧嘩でもしたのか?」

周りの者は皆知っている。藤堂光瑠が圭人を救ったことで、薄井宴の彼女に対する態度は急速に好転し、二人の関係はずいぶんと和らいでいた。

なのに、たった数時間でまた仲違いしたというのか?

……

薄井宴はテラスでタ...

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