第116章

不意にスマホが鳴った。周からだった。

薄井宴はスマホを手に自室へ戻ると、ベランダに立ち、一本の煙草に火をつけた。

周の声には、幾分か怒りが滲んでいた。

「宴兄貴、本家から連絡がありました。来月、先祖祭を行うそうです。それに、圭人が満五歳になったということで、彼に役目が与えられました。薄井家の慣例に従い、単独でご先祖様に線香をあげて土下座し、一人一人に跪いて家系を認める儀式を行うと」

さらに圭人にはスピーチを用意させ、薄井家の次期当主として、薄井家全員の前で挨拶をさせるという。

薄井宴は眉をきつく寄せ、深く煙草を吸い込んだ。「……」

周は歯ぎしりした。

「薄井昌山のや...

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