第137章

こちら、藤堂光瑠はすでに車内に乗り込んでいた。

車内は防音性が高く、それに距離も離れていたため、鬼哭啾々たる声が微かに聞こえてはくるものの、はっきりとは聞き取れなかった。

心配していると、薄井宴が太郎を抱いて戻ってきた。

彼らの慌てた様子を見て、藤堂光瑠は急いで尋ねる。

「どうしたの? 何かあったの? ご先祖様のお参りは終わったの?」

薄井宴は説明もせず、太郎を抱いたまま直接車に乗り込んだ。

周も説明する暇なく、乗り込むとすぐに車を発進させた。

太郎はママを心配させたくなくて、説明した。

「山の奥に突然狼の群れが現れたんだ。すごく怖かったから、僕たち走って戻って...

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