第138章

藤堂光瑠は一瞬呆然とし、ぷりぷりしながら言った。「私、悪いことなんてしてないわ!」

「悪いことしてないなら、何をそんなに慌ててる?」

「慌ててもない!」

薄井宴は唇をきゅっと結び、彼女を無視して部屋の中へと歩を進めた。

圭人が目を閉じて、ぐっすり眠っている様子を見て、尋ねる。

「圭人はどうした?」

「な、何がどうしたって?!」

「帰ってきた時はあんなに元気だったじゃないか。どうして急に寝てしまったんだ?」

「……外に長くいたから、疲れちゃったのよ」

薄井宴は息子の小さな頬を撫で、その呼吸が穏やかなのを見て、それ以上は深く考えず、藤堂光瑠に言った。

「ちょっとこっちへ来い。...

ログインして続きを読む