第164章

しかし、視界に広がるのは依然として暗闇だけだった!

人影はどこにも見当たらない!

藤堂光瑠は警戒し、恐怖に駆られていた。

声は聞こえるのに人影が見えない。彼女は無意識のうちに幽霊を思い浮かべていた……髪を振り乱し、顔は真っ青で、宙に浮いて漂っているような、そんな幽霊を。

「誰? 誰が私を呼んでるの?!」彼女は冷や汗を握りしめながら、きょろきょろと辺りを見回した。

周囲は静まり返っており、何の応答もない。

藤堂光瑠は虚勢を張って自分を鼓舞した。

「煙幕を張るな、話しなさい! さもないと人を呼ぶわよ!」

心地よい男性の声が、再び耳元で響いた。

「光瑠光瑠、いい名前...

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