第292章

 薄井昌山は何かを悟り、その尊大な態度は瞬時に消え失せた。

 彼は恐れおののきながら薄井宴を見つめる。

「薄井宴、俺に手を出せると思っているのか。俺が本当に『あれ』を壊してもいいとでも言うのか?! お……うっ……あああああ!」

 薄井宴は廊下の突き当たりの窓辺に立ち、薄井昌山の悲鳴を聞きながら、黙って煙草をふかしていた。

 その表情は冷酷で険しく、憐れみなど微塵も感じられない。

 薄井昌山が実の祖父であることは事実だ。しかし、自分の父を害し、母に手を出し、息子を傷つけた。これで哪門子の祖父だというのか。

 人の心は血肉でできている。薄井昌山に少しでも情があれば、ここまでやるはずが...

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