第94章

相手が何を言ったのか、中村曇子の目元に侮蔑の色がよぎった。

「わかったわ」

電話を切ると、彼女は清水喬月に言った。

「はっきりしたわ。宴はあの子のこと、好きじゃない。付き合いがあるのは圭人のためよ。あの子、児童心理学が得意なんですって。宴は圭人の病気を治させたいのよ」

「どういうこと? あの子が圭人を治せるって言うの? もう終わりよ。本当に圭人の病気を治せたら、あの子が宴の命を欲しがったって、宴はあげてしまうわ!」清水喬月はひどく狼狽した。

中村曇子は落ち着き払っていた。

「治せるわけないわ! 資格の一つも持ってない、ただの詐欺師よ! 運良く藤原紹弦を二度助けたことで、宴に希...

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