第35章:ファーストキス

カエランの声には、隠しきれない笑いが滲んでいた。「たぶん、いたずら好きな子猫が一匹、迷い込んだだけだろう」

彼が角の向こうに潜んでいるのが誰なのか、正確に把握していることを悟り、私の顔は一気に熱くなった。

「なんてこった!」ピーターソンの声が興奮気味に弾け、額を叩く音がした。「ガブリエルのこと、完全に誤解していました! 申し訳ございません、陛下!」

「構わない」カエランの声色は、諦めを含んだ忍耐強さへと変わっていた。「だが、覚えておくといい。秘密の中には、自然と明らかになるまで時間が必要なものもあるのだ」

ピーターソンは激しく頷いた。「承知いたしました! 私は何も聞いていませんし、何も...

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