第90章:カオス

ゲストからゲストへと渡り歩き、首を横に振られるたび、「ごめんなさい、見てないわ」という言葉を聞くたびに、心臓の鼓動が早くなっていく。

十人近くに尋ねても何の収穫もなく途方に暮れていると、ビーズのあしらわれた紺色のドレスを着た老婦人が近づいてきた。クロフォードの群れの一員、パターソン夫人だ。

「ああ、あの女の子のことなら」パターソン夫人は言った。「二十分ほど前かしら、ケータリングのスタッフと一緒に森の小道の方へ歩いていくのを見ましたよ」

肺から空気が一気に抜けたような衝撃が走った。「その男は、どんな見た目でしたか?」

「背が高くて、黒髪で。給仕の制服を着ていたけれど……」パターソン夫人は...

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