第32章 ボディーガードクリス

冴島零の言葉が口をついて出た瞬間、冴島心菜と荻原和夏はそろって固まった。ずっと成り行きを眺めていたボディーガードまで、目を丸くする。

冴島心菜は自分の耳を疑った。兄が、よそ者の肩を持った――しかも、あの女を。

(やっぱりママの言う通りだ。あの女、兄さんを相当たぶらかしてる)

荻原和夏もまた、冴島零を奇妙な目で見た。彼女が言ったことは事実だとしても、こんなにあっさり信じるなんて。経緯くらい確かめてもいいはずなのに、と。

一方、ボディーガードは内心で胸をなで下ろしていた。さっき自分がしたのは、荻原和夏の手からモップを取り上げただけ。力でねじ伏せたりはしていない。もし冴島零の不興を買ってい...

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