第110章

 三日後、ルシアンの熱はすっかり引き、体調も元どおりになった。

 山のように溜まっている会社の仕事を、これ以上先延ばしにはできない。彼は朝一番で楓葉館を後にした。

 寝室には、ふたたび静寂が戻る。けれど空気の奥底には、まだかすかに、彼だけの冷たい気配が漂っている気がした。

 セレステは全身が鉛のように重く、ぐったりと乱れたベッドに身を丸めていた。指一本動かすのさえ、力が入らない。

 この三日間――まるで、混沌と甘美がないまぜになった夢の中にいたようだった。

 あの日部屋に踏み込んできてからのルシアンは、一歩たりとも寝室の外へ出ようとしなかった。

 食事とトイレという最低限の用事を...

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