第121章

 ルシアンはどこか心ここにあらずといった様子で車のドアを引き開け、中へと乗り込んだ。

 車内では、セレステがすでに長いこと彼を待っていた。

 ルシアンが乗り込んできた瞬間、彼女のどんよりと沈んでいた瞳がふっと輝きを取り戻し、無意識のうちにすがりつくように彼の手を握りしめた。

「ルシアン……」

 ルシアンは彼女を突き飛ばしはしなかった。だが、その手がスーツの袖に触れた途端、彼が腕の筋肉を限界まで張り詰めているのが伝わってきた。

 彼は……緊張しているの?

 セレステはひどく怯え、慌てて手を離すと、車内の反対側の隅へと身を縮めた。うつむいたまま、もう一言も発することができなかった。

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