第182章

 ルシアンの耳に届いたのは、老ヴィトリがセレステを罵倒する数言だけだった。

 彼の顔色が一瞬にして氷のように冷たくなった。

「誰の許可を得て、セレステをそこまで非難している!」

「図に乗るな!」

 老ヴィトリは書類をひっつかむと、ルシアンの顔めがけて力任せに叩きつけた。

 容赦なく書類を浴びせられても、ルシアンは身じろぎ一つせず、冷え切った眼差しで父親を真っ直ぐに見据えていた。

「父さん、かつて俺にこう忠告したのはあんただったはずだ。自分の心と向き合い、妻を大切にしろと」

「あの時と今とでは訳が違う!」

 老ヴィトリは怒鳴り声を上げ、怒りで胸を激しく上下させた。

「お前に彼...

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