第61章

 ルシアンはラウンジを飛び出し、足早に人混みを見渡したが、ヴェロニカの姿はどこにもなかった。

 彼はますます眉根を寄せ、歩調を速めて側面の回廊を抜け、ホテルの裏庭へと続くガラス扉を押し開けた。

 すると、噴水のそばに背を向けて立ち、肩を微かに震わせている人影が目に入った。

「ヴェロニカ」

 ルシアンは歩み寄った。

 その声にヴェロニカは身体を強張らせたが、振り返ろうとはせず、かえって顔を深く伏せ、すすり泣く声を大きくした。

 彼女の前に立ったルシアンは、涙で化粧が崩れ、目尻に黒い滲みが広がっているのを見て、思わず眉をひそめた。

 しばらくして、彼は深く息を吸い込み、彼女のわきま...

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