第92章

 ルシアンはふっと息を詰まらせた。胸の奥にのしかかる、重苦しくて見知らぬ感情が、唐突に行き場のない邪悪な怒りへとすり替わる。

 荒々しく身を乗り出し、彼女の首を容赦なく鷲掴みにすると、そのまま前のめりになるほど強く引き寄せた。

「この売女が!」

 ルシアンは歯軋りしながら吐き捨てた。

 なぜこれほどの怒りが込み上げてくるのか、自分でもわからない。もっともらしい理由すら見当もつかなかった。

 脳髄に靄がかかったように、思考を巡らせることさえひどく困難に思える。

 あろうことか、彼は無意識のうちにセレステの妄想へ合わせるように言葉を紡いでいた。

「お前はそこまで……そこまで恥知らず...

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