第107章

「じゃあ、見せて。……あなたが本当に“戻ってきた”のかどうか」

彼女はその場で指輪をはめはしなかった。けれど、彼に返しもしない。

箱はそのまま自分のバッグへ。母の手記と、葉山爺さんの小切手と一緒にしまい込んだ。

葉山陸斗は、彼女が指輪をしまう様子を見届ける。張り詰めていた口元が、ようやく少しだけほどけた。ほんのわずか、こっそりと弧を描く。

「証明してみせる」

菊地杏奈がオフィスを出ると、外の陽射しはちょうどいいあたたかさだった。

彼女はふとバッグに視線を落とす。中で、銀の指輪が静かに眠っている。まるで、今しがた土に落とされた小さな種みたいに。

杏奈は笑った。

一年後。

菊地...

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