第649章:人々を苦しめる

「おまえら、俺の目の前でいつまでそうやって抱き合ってるつもりだ? おいおい、せめて俺の気持ちも考えてくれよ――こっちは年中独り身の男なんだぞ」

ギルバートは軽く咳払いをし、悪気のない忠告を添えた。

だが返ってきたのは、ダニエルの氷のように冷たい睨みだった。

まるで手足を引きちぎってやると言わんばかりの。

(そこまでする必要あるか?)

ただ親切心でひと言言っただけなのに、ダニエルの殺気立った視線に、こちらが殺されそうだ。

やはり――どれほど頭が切れて有能な人間でも、恋に落ちた途端、見事なまでに愚かになる。

けれどギルバートの言葉のおかげで、エミリーは我に返った。自分がどれほど無防備...

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