第670話自分を馬鹿にして無邪気さを失いかけた

アプトンはすぐに察した――連絡してきた相手はエミリーに通じるコネを持ち、しかも相当な影響力を備えた人物だ。

折り返しの電話を入れたアプトンの口調は、はっきりと丁重だった。「スミス様、私にできることなら何でも。お望みなら、どうぞお申しつけください」

「スティーブンス・グループの内部システムに入り、ここ数か月分の財務報告書を抜き出せるか。無理なら、今ここでそう言え」

ダニエルの声は落ち着いているのに、疑いようのない威厳が滲んでいた。

たいていの人間には、荷が重い依頼だろう。

そもそもスティーブンス・グループほどの大企業なら、一流の技術者を揃えている。システムもそう簡単に破らせはしない。

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