第112章

まさか――こんな状況が、また戻ってくるなんて。

 高橋由美が、つい嫌味のひとつも言わずにはいられなかった。

 母親が由美をちらりと見て、そっと腕を引く。今は余計なことを言うな、という合図だ。

 けれど、その一言は鈴木結月の耳に届いていた。結月は横目で由美を見やる。由美が口を開いた瞬間、結月は確信した。トイレで高橋悠人のことをこき下ろしていたのは、この女だ。

 探す手間が省けた、というわけ。

 鈴木結月は、見た目だけなら人を油断させるタイプだ。おとなしくて甘い雰囲気。今日はなおさら、ふわりとした甘めの装いをしている。結月は顎を少し上げ、向かいの由美を見つめたまま、唇の端をやわらかく持...

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