第133章

あと数分で勤務開始だ。すでに何人も出社してきていた。

 みんなが口々に鈴木結月へ挨拶してくる。結月は笑って会釈しながら、こっそり高橋悠人のオフィスを盗み見た。

 ……いない。

 胸の奥がすっと冷える。足がわずかに止まった、そのとき。

 背後から、やけに元気な声が響いた。

 「高橋さん、おはようございます!」

 結月はまだ振り返っていないのに、心臓だけが先に暴れ出す。ど、どうしよう。最初の一言、何て言えばいい? ただの挨拶じゃ、そっけなさすぎる?

 私は――。

 そこまで考えた瞬間、背中の気配が隣へ並んだ。

 結月は視線を落としたまま、最初に目に入ったのは彼の革靴だった。

...

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