第170章

「眉間にしわ、寄せないで」

 鈴木結月は手を伸ばし、彼の眉間をそっと撫でていく。凛々しい剣眉が少しずつほどけ、元の位置へ戻っていった。

 柔らかな声で言う。

「うちの玲央ね、生まれて最初に見るパパが、そんな顔してたら嫌だもん」

「笑ってあげて」

 正直、結月があとになってあの日の苦しさを思い出そうとしても、痛みの頂点がどんなものだったかは、もう曖昧だ。代わりに、いちばん鮮明に残っているのは――医師が小さな赤ん坊を取り上げた瞬間、この世界に響き渡った、あの力強い泣き声だった。

 高橋悠人は振り返り、少し離れたところの玲央を見て目を丸くした。そして小声で言う。

「……なんであんなに...

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