第61章

 誕生日プレゼント……。

 ふいに藤井健斗は思い出した。自分も、とても大事なことを忘れていたのだ。鈴木結月の誕生日プレゼントを、用意していない。

 だからその日、家に帰ると健斗は貯金箱を引っぱり出した。ずっとずっと貯めてきた缶。本当は、母さんの病気がよくなったら、一緒に遊園地へ行くためのものだった。

 でも今は――結月に、プレゼントを買いたい。

 次の週末。健斗は早めに児童会館の入口へ着いていた。中の様子を何度も気にしながら、手には小さな、きれいな袋を提げている。

 やがて授業が終わり、赤いダッフルコートを着た女の子が、ぴょんぴょん跳ねるみたいに駆け出してきた。

 けれど外へ出た...

ログインして続きを読む