第83章

鈴木結月はゆっくりと振り返った。わざと横顔だけを向け、視線を橋本理子と橋本美月のほうへ流す。

 負け犬の顔なんて、これまでいくらでも見てきた。けれど、しょんぼりした顔が二枚並ぶのを一度に拝めるとなれば――さすがに愉快だ。

 鈴木結月はふっと口元をゆるめ、唇だけで、音もなく言葉を形にした。

 ――ご愁傷さま。

 悪意は、隠しもしない。

 自室へ戻った結月は、まだ気分がいいままだった。我ながら、よく出来たお利口さん。上はイケメンを手玉に取り、下は鬱陶しい継母を叩ける。

 イケメンを手玉に――。

 そこで急に、くすっと笑いが漏れた。自分の中で高橋悠人が「イケメン」扱いになっていること...

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