第90章

鈴木結月の視線が、ちょうど高橋悠人とぶつかった。最初は平然としていたのに、彼の手元――ピンクの便箋で折られたハートに目が落ちた瞬間、表情がわずかに揺れる。

 結月は思わず、ぱちりと瞬きをした。

 悠人が低い声で訊く。

「……お前が入れたの?」

 けれど言い終えた途端、彼はふっと笑って、面白がるみたいに続けた。

「何、緊張してんの?」

「してないし。誰が緊張してるって言ったの」

 結月は反射的に否定した。心の奥では、ここで崩れるわけにはいかない、と意地が鳴っている。ラブレターを書いたくらいで何だっていうの。

 怯まずに悠人を見返すと、彼は数秒、結月を見つめたまま――不意に、すっ...

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