第91章

  凍てつく冬の夜。冷たい風が吹き抜けているのに、鈴木結月の身体だけがじわじわと熱を帯びていった。彼の言いたいことが、ちゃんと分かったのだ。――自分の人生に、彼女がいてくれてありがとう、と。

  でも、それは結月だって同じだった。

  前の人生では二十七歳まで生きたのに、誰かを好きになったことが一度もない。たぶん、両親のうまくいかない結婚が、幼い頃から心に焼き印みたいに残っていたせいだ。

  恋も、結婚も、いちばんみっともない部分ばかりを見せつけてきた。

  だから結月は、小さい頃からそういうものをあまり信じてこなかった。

  何年連れ添った夫婦だって、一度の浮気であっさり崩れる。...

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