第94章

 そう言って中野博はもう一口お茶をすすり、改めて切り出そうとした。ところが先に、高橋悠人のほうが俯いたまま視線を上げてきて言う。

「俺は……俺たちにとって一番大事なのは勉強だと思います」

 中野博は一瞬きょとんとしたあと、嬉しそうに机をバン、と叩いた。拍手でもしかねない勢いだ。

「高橋悠人! その考え方、先生は本当に嬉しいぞ。そうだ、高校生は勉強が本分だ。今の最優先事項は学業、これに尽きる」

 高橋悠人は素直に頷く。

 中野博はその様子に、心の底から満足そうだった。教える側として、これ以上の喜びがあるだろうか。

 道を踏み外しかけていた生徒が、少しずつ正しいほうへ戻っていく。積み...

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