第97章

「ただ、もったいないなって思っただけ?」と、鈴木結月はのんびり言った。

 高橋悠人が不思議そうに首を傾げる。「何がもったいないんだ?」

「だって本当は、今日デートするはずだったでしょ」

 鈴木結月の声はふわりと甘い。別に誘惑しているつもりはなくて、もともとそんな甘い声なのだ。

 高橋悠人は、もともと二人で本屋に行く約束をしていたことを思い出す。言われてみれば、確かにそれはデートだ。

 彼は視線を落とし、珍しく真面目に考え込んだ。

 高橋紀明が押しかけてきてムカついたからって、未来の彼女とのデートを捨てる。――それ、割に合わなくないか。

 高橋様の数学満点は伊達じゃない。損得勘定...

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