第180章

佐藤玲奈はオーディションから戻ってくると、すぐに大きな木の下で遠くを見つめぼんやりしている白崎雪乃の姿が目に入った。

「どうしたの?」佐藤玲奈は歩み寄って、白崎雪乃の肩をちょんと突いた。

白崎雪乃は我に返り、佐藤玲奈を見つめながら軽く首を振った。

「何でもないよ。それより、オーディションはどうだった?」

「まあ、そんなもんかな」佐藤玲奈は肩をすくめた。彼女はオーディションの結果をさほど気にしていなかった。受かろうが落ちようが、彼女の気持ちにはあまり影響しないのだ。

しばらくの間、二人は言葉を交わさず、ただ大木の下で静かに佇み、穏やかな雰囲気を楽しんでいた。

佐藤玲奈は振り返って白...

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