第25章

「いいよいいよ、もう黙るから」厚川が両手を上げて降参したが、その表情には悔悟の色は微塵も見えなかった。

佐藤玲奈は眉をひそめ、無意識に数歩後ずさりした。

彼女はこの人が好きではなかった。

「さて、本題に戻りましょう」厚川は肩をすくめ、佐藤玲奈に微笑みかけて言った。「今日は玉を持ってきていないんです。別の工房に置いてあるので、また日を改めて佐藤さんをお連れしますよ」

「わかりました。でも、あなたが知也さんのお友達なら、私のことは堀田奥様と呼ぶべきではないでしょうか」

佐藤玲奈は薄く笑いながら言った。「だって私はもう知也さんと結婚していますから、呼び方は正しくしておいた方がいいですよ」...

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