第360章

エーゲ海という名のレストランは、格調高く、暖色系の照明に照らされ、艶めかしい雰囲気が漂う恋人たちの格好のデートスポットである。

現在、窓際の個室で一組の男女が食事をしている。しかし、二人の間に流れる空気はどこか異様で、特に男から放たれる圧倒的な威圧感のせいで、ウェイターでさえ容易には近づけない。

重苦しい沈黙が二人の間を静かに流れる。やがて、男は小さくため息をつき、淡々とした声で口を開いた。

「いつまで拗ねているつもりだ。なんなら俺が八代倫也を殴ってきてやろうか」

佐藤玲奈は黙ってナイフとフォークを置き、顔を上げると、呆れたように堀田知也を睨みつけた。

「ふん、男なんてどいつもこい...

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