第389章

「いい加減な噂を流すな!」

 夏野空はたまらず大声を上げた。

「声が大きいって!」

 同僚は慌てて夏野空を引っ張り、周囲を警戒するようにキョロキョロと見回した。

 夏野空も自分が少し取り乱していたことに気づき、わずかに冷静さを取り戻して声を潜めた。

「だから、根も葉もない噂を流すのはやめてくれないか? 霧雨さんがそんなこと……」

「嘘なんかじゃないさ」

 同僚はカウンターの向こうに座っている霧雨縁を横目で睨み、声を押し殺して言った。

「お前、気づいてないのか? 毎日、彼女を迎えに来るあの高級車。あの車の持ち主が、霧雨縁のパトロンだって、みんなの噂になってるんだぜ」

 夏野空...

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