第569章

「佐藤玲奈、大丈夫か」

蝶野諭介は佐藤玲奈に付き添い、霊安室を出た。前を歩く細い背中を見つめると、胸の奥がじくりと痛む。衝動のまま抱き締めて、腕の中で思いきり泣かせてやりたかった。

だが、伸ばした手が彼女に触れそうになったところで、蝶野ははっとして引っ込める。

――まだだ。今じゃない。

いまの彼女は、まだ自分のものじゃない。遠慮なく触れていい立場でもない。

やがて二人は地下1階を出て、陽だまりの小さな庭へと歩いた。庭は静かで、少し離れた場所で数人の介護士が患者を散歩させている以外、誰の気配もない。

佐藤玲奈は東屋のベンチに腰を下ろし、介護士に付き添われて歩く患者たちの姿を、焦点の...

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