第1章
「セレーナ、決まったか? この七人の中から、誰を夫に選ぶんだ」
父の声が、私を炎の記憶から引き戻した。
勢いよく顔を上げると、目の前にはリストが置かれていた。七つの名前、七つのファミリーの跡取りたち。
くそっ、私は戻ってきたんだ。
本当に、この忌々しい夜に逆行したっていうの。
窒息しそうな感覚がまだ喉の奥にこびりつき、肌にはまだ業火に焼かれる痛みが残っているかのようだ。イザベラの悲鳴を覚えている。ダンテが私の手を振り払い、彼女を抱えて一度も振り返ることなく逃げ去ったあの光景を。
「セレーナ?」
父が眉をひそめる。
私は深呼吸をすると、万年筆を手に取り、ダンテ・ルケーゼの名前の上に躊躇なく太いバツ印を引いた。紙が破れるほどの筆圧で。
そして、こう書き記した。エンツォ・コルレオーネ、と。
父は驚愕の眼差しで私を見た。
「正気か? お前はずっとダンテを好いていたじゃないか。どうして急に——」
「目が覚めたの」
私は父の言葉を遮り、毅然と言い放った。
「ダンテ・ルケーゼは利己的なクズよ。あんな奴に嫁ぐくらいなら、その辺の犬と結婚した方がマシだわ」
父は数秒沈黙し、さらに深く眉を寄せた。
「セレーナ、もう一度よく考えなさい。仮にダンテを選ばないにしても、他にも候補はいる。エンツォは確かに忠実だが、あまりにも寡黙すぎる。それに、コルレオーネの力は七つのファミリーの中でも上位三位には入らないぞ」
「考える必要なんてないわ」
私は父の目を真っ直ぐに見据えた。
「私はエンツォを選ぶ」
だって前の人生で、躊躇うことなく炎の中に飛び込み、声が枯れるまで私の名前を叫んでくれたのはエンツォだけだったから。彼の瞳を覚えている。あの深く暗い瞳に満ちていた、絶望と決死の覚悟を。
彼は私を救い出してくれるところだった。ほんの、あと少しで。
父は長いこと私を見つめていたが、やがてため息をつき、頷いた。
「お前がそこまで言うなら、認めよう」
父はそう言うと、私の選択を記した紙を赤いシーリングワックスで封筒に閉じ込めた。
「三日後の婚約パーティーで、皆の前で正式に発表する。それまでは他言無用だ」
「ありがとう、お父様」
父が部屋を出て行き、私が安堵の息をつく暇もなく、書斎の扉が乱暴に開け放たれた。
ダンテがノックもせずに大股で踏み込んでくる。その後ろには、うつむき加減でか弱く無害な少女を装ったイザベラが続いていた。
「セレーナ、聞いてくれ」
ダンテは当然とでも言わんばかりの口調で切り出した。
「イザベラは卒業したばかりで、今は身寄りがないんだ。彼女をこの屋敷の客室に住まわせようと思う。構わないよな?」
イザベラは怯えたように私を見上げ、目元を赤くした。
「ファルコーネ様、もしご迷惑でしたら、私、地下室でも構いませんので……」
このあまりにも見覚えのある光景を前にして、私の心には骨の髄まで凍りつくような冷たさしか湧かなかった。
イザベラ——父の部下の娘。彼女の父親は抗争で命を落とし、私の父は哀れみから彼女が大学を卒業するまで援助してやった。前の人生では、この馬鹿げた同情心からすべてが始まった。彼女は少しずつ私の居場所を侵食し、私の婚約者を誘惑し、最後には私から命まで奪ったのだ。
「大いに構うわよ」
ダンテは呆気に取られた。
「何だって?」
「ふざけるなと言っているのよ」
私は立ち上がった。
「ファルコーネはマフィアであって、慈善団体じゃないの。父が大学を出してやっただけでも、十分すぎるほど慈悲深いでしょ」
「セレーナ、君はいつからそんな冷血になったんだ!」
ダンテが声を荒らげる。
「彼女はただの可哀想な女の子じゃないか!」
「知ったことじゃない」
私は冷たく言い放った。
「それにダンテ、ノックもせずに私の書斎へ入っていいと誰が許したの? エンツォ!」
扉の外からエンツォが姿を現す。七人の婚約者候補の一人でありながら、彼はこの十年間、ずっと影のように私の傍に控え、私を守り続けてきた。その深く暗い瞳がダンテとイザベラを一瞥し、彼の手が腰の銃に添えられる。
「つまみ出して」
ダンテは信じられないというように目を剥いた。
「気でも狂ったのか? セレーナ、俺たちはもうすぐ婚約するんだぞ!」
「それはあなたの妄想よ」
私は鼻で笑うと再び椅子に腰を下ろし、もう彼の方を見ようともしなかった。
「さあ、私の縄張りからとっとと失せなさい」
エンツォが一歩前に出る。その手はすでに銃の握りを掴んでいた。
ダンテは青筋を立てていたが、エンツォの放つ威圧感を前にして、最後は忌々しげに舌打ちをし、イザベラの腕を引いてきびすを返した。扉の前に来ると、彼は振り返って恨みがましく言い捨てた。
「セレーナ、絶対に後悔するぞ」
扉が乱暴に閉められる。
私は椅子の背もたれに体を預け、口角を上げて冷たく笑った。
三日後、誰が後悔することになるのか、思い知ればいいわ。
