第5章

 会場は水を打ったように静まり返っていた。

 ダンテはその場に凍りつき、傲慢だった表情は驚愕へと変わっている。

「嘘だ……あり得ない……」

 彼はそう呟くや否や、駆け寄ってきて私の手から紙切れを奪い取った。

 そこにある名前を凝視する彼の手は震え始めている。やがて紙切れは指の隙間から滑り落ち、ひらひらと床へ舞い落ちた。

 フロアの片隅では、エンツォも呆然と立ち尽くし、目を丸くして私を見つめていた。

 彼のそんな姿を見て、私はたまらず吹き出しそうになる。

「セレーナ!」

 ダンテが突然、私の腕を掴んだ。

「わざとだろう!? イザベラのことで、俺に腹を立てて当てつけをしているん...

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