第149話ドリアンは私を隠す

ライラ視点

エレナのクローゼットに身を滑り込ませた。けれど、窮屈な空間に素早く体を押し込んだとき、顔に巻いていた黒いスカーフが、エレナの小さなコートを掛けていた突き出たフックに引っかかってしまった。布地が一瞬きつく引きつられたかと思うと、ブチリと音を立ててちぎれ、頭からほどけて床に黒い水たまりのように落ちた。

やめて、やめて、やめて! 落ちたスカーフに必死で手を伸ばす私の中で、狼が悲鳴を上げた。

それを拾うどころか、ワードローブの扉を閉める間もなく、テントの入り口がカサリと音を立て、重い足音が彼女の寝室に入ってきた。

ドリアン――。

ワードローブの扉の隙間から、彼が暖かいランプの光の...

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