第182話さらば

ジョーイ視点

今夜、私は一度も泣かなかった。エリックと対峙し、その裏切りを罵ったときも。過酷な帰り道、何時間も雨と泥の中をケイレブの体を引っぱって、手が擦りむけて血が滲むまで歩き続けたときでさえ。やるべきことが多すぎた。前に進まなければという切迫感が強すぎて、涙を流す余裕なんてなかったのだ。

でも今、静かな医療テントの中でケイレブと二人きりで座っていると、ついに現実が突きつけられた。これが、お別れなんだ。

嗚咽は突然、激しく、抑えようもなく込み上げてきた。何か月も抑えつけてきた感情が一度に溢れ出し、体中が震えた。

「ジョーイ」ケイレブが億劫そうに手を上げ、私の頬に触れた。「息をして、愛...

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