第190話絶望的なエリック (2)

エリック視点

俺の手は反射的に頬へと伸びたが、義顔が外れてしまったことに気づき、心臓が凍りついた。

吸血鬼たちは、嫌悪と好奇の入り混じった目で俺を見つめていた。顔の右半分は完全に晒されていた。溶けた肉、ひきつった傷跡、どんな治癒魔法をもってしても二度と元通りにはならない無残な残骸。

「なんてこった」一人が囁いた。「あいつ、一体どうしたんだ?」

カシウスは新たな興味を抱いた様子で俺を観察した。「偉大なるエリック・シルバークレストか。仮面をつけているのも無理はないな」

俺はあがくようにして上体を起こした。「どうでもいい。もう何もかも、どうでもいいんだ」

「実はですね」カシウスの副官の一...

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