第32章セラフィナ容疑者

ドリアン視点

ライラの病室を出ると、胸の中に居座った不可解な落ち着かなさを抑えようとした。病院の廊下に漂う消毒液の匂いが鼻をついたが、俺の狼はまだ服に残るライラの香りを嗅ぎ分けることができた。

『彼女の元へ戻れ』と、脳内で俺の狼が低く唸った。『彼女には俺たちが必要だ』

「黙れ」と、俺は息を殺して命じた。「彼女は俺を必要としていない」

『嘘つきめ』と、狼が鼻で笑った。『お前は彼女の目に宿る希望を見たはずだ。彼女は俺たちを必要とし、俺たちも彼女を必要としている』

俺はその声を無視し、エレベーターへ向かう歩を速めた。優先すべきは、デレク・ホーソーンの狼藉について父に連絡することだ。ホーソー...

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