第23章

彼は黒田理沙を見つめた。いつもより、その目に真剣さが宿っている。

「黒田さん」

低く落ち着いた声。懇願に近い熱が混じる。

「こんなお願い、厚かましいのは分かっています。でも、父のことは……あなたにしか頼れない。前に出してくれた薬、飲んだら明らかに良くなったんです。叔父も言ってました。あなたは、今まで会った中で一番の医者だって」

一拍置き、言い添える。

「行ってくれるなら、条件はいくらでも出します」

黒田理沙は彼を見た。

目の前に立つ花村尚希は背が高く、圧がある。けれど今は、ビジネスの場で見せる鋭さはなく、ただ切実な焦りだけが瞳の底にある。

さきほど手を伸ばされ、引かれた感触が...

ログインして続きを読む