第232章

「わ、私は……通りかかっただけで……」

顔面は蒼白。半歩たりとも近づけない。

ボディーガードは冷ややかに視線を引き、何事もなかったかのように背を向けた。

その先では、雰囲気の異なる二人の男が、すでに大股で廊下の奥へ消えていく。

極上のイケメンが視界から消えるのを見届け、黒田美穂は唇をぎり、と噛んだ。瞳に滲むのは、悔しさだけ。

「……っ」

苛立ちまぎれに床を踏み鳴らし、腹の底に溜まった毒を抱えたまま、歯を食いしばってトイレへ入る。

中はがらんとしていた。美穂が個室へ向かおうとした、そのとき――奥から言い争う声が聞こえた。

「青山美玲、なに気取ってんの?」

黒田美穂は、ぴたりと...

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