第238章

だが、すぐに彼女の顔から血の気が引いた。

「大奥様!」

傍らの看護師・高橋は黒田美沙子の剣幕に息を呑み、黒田婆さんの車椅子を後ろへ引いて引き離そうとした。

しかし黒田美沙子は両手で黒田婆さんの手首をがっちり掴んだまま離さない。看護師は大奥様を傷つけるのが怖くて、力任せにもできずにいる。

「離して! 大奥様から手を離して!」

焦った高橋が叫ぶ。けれど掴む力が強すぎて、いくら引いても車椅子はびくともしなかった。

黒田婆さんは目の前の娘を見据え、瞳の温度が一瞬で凍りつく。

「黒田美沙子……その気は捨てな。遺産なんてない。わたしの棺桶代は、数年前にあんたらみたいな恩知らずの厄介者が、き...

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