第76章

一方、マイバッハの車内。

花村尚希は後部座席に身を預け、助手席の秘書がビジネスバッグから書類を取り出して振り返り、差し出した。

「花村社長、今回のテクノロジー大会の準備案です。宣伝部のほうは手配済みで、あとは社長のご署名だけです」

花村尚希は受け取り、ページをめくっていく。

一枚、一枚――いつもの何十億の案件よりも、よほど慎重に目を走らせた。

秘書はルームミラー越しに社長の横顔を窺い、思わず口元をゆるめる。

「花村社長、珍しいですね。テクノロジーコンペにここまで力を入れられるなんて。以前はこういう案件、見向きもしなかったのに」

花村尚希は書類を閉じ、視線を窓の外へ落とした。

...

ログインして続きを読む