第3章 美術部の艶めかしいモデル
三日間、池田を観察し続け、私は彼の生活リズムを把握した。
朝五時に起きて屋台の準備、午前は授業、午後四時から七時までコンビニでバイト、夜八時から十二時まではプログラミングの請負仕事。
あまりにも過酷なスケジュールだ。
毎日疲れきっているはずなのに、それでもなお背筋を真っ直ぐに伸ばしている彼の後ろ姿を見ていると、胸が締め付けられるように痛む。
前世の私はあまりにも自己中心的で、自分の苦しみに浸るばかりで、彼の苦労に気づいてあげることができなかった。今世では、その二倍、三倍の愛情で彼に償ってあげたい。
だが、まずはこの警戒心の強い子狼くんに、どうやって近づくかだ。
チャンスはやってきた。
今日の午後、私は「偶然」コンビニを通りかかり、池田が品出しをしているのを見かけた。彼の顔色は少し青白く、額には細かな汗が滲んでおり、明らかに疲れがピークに達している。
私の雇用計画を実行する時が来た。
わざと彼のバイトが終わる時間まで待ち、コンビニの入り口で彼と「ばったり」出くわした。
「池田くん!」
私はちょうど通りかかったかのように声をかけた。
池田は私を見ると、明らかに一瞬固まり、それからすぐに無表情に戻った。
「神崎さん」
「奇遇だね、ここでバイトしてたんだ」
私は驚いたふりをする。
「何か用か」
彼は私と長話をする気はないようで、私を避けて立ち去ろうとした。
「待って!」
私は彼を引き止める。
「実は、お願いしたい仕事があるの」
池田は足を止め、その目に警戒の色を浮かべた。
「何の仕事だ?」
「美術モデル」
私は単刀直入に切り出した。
「報酬は二万円。たった二時間でいい」
池田の瞳がわずかに見開かれた。この金額に驚いているのは明らかだ。なにせ、彼がコンビニで一日働いて稼げるのは四千円。二万円は彼の五日分の給料に相当する。
「神崎さん、俺は変な仕事はしない」
彼の声は少し緊張していた。
彼が何を考えているか分かっていた私は、すぐに説明した。
「ただ座って、私に絵を描かせてくれるだけ。すごく真面目な美術の練習よ。美術の特待生試験の準備をしてて、人物デッサンの練習が必要なの」
池田は私を見つめ、その目は疑念に満ちていた。
「……二万円? ただ座ってるだけで?」
「そう、ただ座って二時間ポーズを保つだけ」
私は誠実に頷く。
「池田くん、お金が必要なんでしょう? これは正当なアルバイトよ」
「お金が必要」という言葉を聞いて、池田の顔色は少し曇ったが、最終的にはお金の誘惑が勝ったようだった。
「……いつだ?」
「今からでも大丈夫。美術部の教室はもう借りてあるから」
美術部の教室は校舎の四階にあり、この時間にはもう他の生徒はいない。夕日が窓から差し込み、教室全体が金色に染まっていた。
私はあらかじめイーゼルや画用紙、様々な画材を用意しておき、いかにも真剣に絵を描くという雰囲気を醸し出していた。
池田は私の後について入ってくると、周りを見回して他に誰もいないことを確認した後、緊張した面持ちで尋ねた。
「何をすればいい?」
「まず、そこの椅子に座って」
私は教室の中央にある椅子を指差した。
池田はそこへ歩いていくと、背筋をピンと伸ばし、両膝を揃え、手を膝の上に置いて座った。まるで授業中に指されて答えさせられる優等生のようだ。
この姿……本当に可愛すぎる。
私は彼の前に歩み寄り、プロっぽく彼の姿勢を直すふりをした。
「もっとリラックスして。肩、そんなに緊張させないで」
私の手が彼の肩に触れた瞬間、彼がびくっと体をこわばらせたのがはっきりと分かった。
「池田くん、緊張しすぎよ」
私はくすりと笑った。
「ただ絵を描くだけなんだから」
「分かってる」
彼は硬い声で答えたが、耳の付け根はすでに赤くなり始めていた。
私は彼の背後に回り込み、角度を調整するふりをしながら、実際には彼の横顔を堪能していた。
本当に格好いい。この角度だと、彼のまつ毛はありえないくらい長いし、鼻筋のラインも犯罪的なほど完璧だ。
「よし、じゃあ服を脱いでください」
私はイーゼルの前に戻り、平然と言った。
「なっ!?」
池田は勢いよく立ち上がり、椅子が数センチ後ろに滑った。
「美術モデルなんだから、当然服は脱ぐでしょ」
私は当たり前のように言う。
「人体芸術にはリアルな体のラインが必要なの。そのくらいのプロ意識もないの?」
池田の顔は、熟した林檎のように真っ赤になった。
「俺はそんな、ふしだらな人間じゃない!」
「何がふしだらなの?」
私は分からないふりをする。
「これは芸術創作よ。すごく真面目なこと。もしかして池田くんは、自分の体に自信がないとか?」
この一言は、少年の自尊心をうまく刺激した。池田はぐっと歯を食いしばり、目を閉じてシャツのボタンを外し始めた。
「上着だけだ」
彼は強調した。
「それ以上は絶対に無理だ」
「いいわよ」
私は快く承諾した。
実際のところ、彼の上半身を見られるだけでもう大満足だ。前世では夫婦だったけれど、池田はいつも恥ずかしがり屋で、私の前で上半身裸になることは滅多になかった。
池田は目を閉じたまま、まるで死地に赴く烈士のように、ゆっくりとシャツのボタンを外していく。
ボタンが一つ、また一つと外れるにつれて、彼の美しい鎖骨が私の目の前に現れた。肌は健康的な小麦色で、恥じらいからかほんのりピンク色に染まっている。筋肉のラインはしなやかでありながらも過剰ではなく、胸筋は豊かで、腹筋ははっきりと割れていた……。
なんてこと、この体はまさに犯罪級だわ!
「うーん、すごく綺麗!」
私は思わず賛美の声を上げた。
「池田くんの肌ってピンク色なんだね。可愛い」
「黙れ!」
池田は恥ずかしさと怒りで私を睨みつけたが、羞恥心のせいでその睨みには全く威圧感がなく、かえって格別に可愛らしく見えた。
私は絵筆を手に取り、真剣に描くふりをしながら、実際には目は彼の体の上をさまよっていた。この距離なら、彼が緊張でわずかに上下する胸や、あの魅力的な腹筋のラインもはっきりと見える。
「池田くん、筋肉すごく鍛えられてるね」
私は「絵を描き」ながら褒め称える。
「普段から筋トレとかしてるの?」
「品出し……を、たくさんしてるから」
彼は気まずそうに答えた。
室内の温度が少し高いのか、池田の額に汗が滲み始めた。私は絵筆を置き、ティッシュを手に彼の方へ向かった。
「汗、拭いてあげる」
「いや……」
彼は断ろうとしたが、私はもう彼の目の前に迫っていた。
この距離だと、彼から漂うほのかな石鹸の香りと、少年特有の爽やかな匂いがする。私が優しく彼の額の汗を拭ってやると、彼の呼吸が速くなるのを感じた。
「池田くんのまつ毛、本当に長いね」
私は小声で呟き、わざと顔をさらに近づけた。
「神崎さん……」
彼の声は少し掠れていた。
私が顔を上げて彼を見つめると、彼の瞳に、私がよく知る表情が浮かんでいることに気づいた——それは前世、彼が私を見つめる時によく見せた、熱く、そして内に秘めた眼差しだった。
私の心臓が、一瞬跳ねた。
まさか、十七歳の池田も、私をこんな目で見つめていたなんて。
その時、私はとある……とても礼儀正しい反応に気がついた。
「くすくす……」
私は思わず笑い声を漏らした。
「池田くんは正直ね」
池田は私の視線を追って下を向くと、顔が血が滴るほど真っ赤になった。彼は慌てて脱いだシャツでそこを隠し、どもりながら言った。
「こっ……これは正常な生理反応だ!」
「分かってるわよ」
私は瞬きをする。
「男の子はみんなそうなんだから、恥ずかしがることないじゃない」
大人の余裕を見せつけられ、池田はさらに羞恥心を募らせ、穴があったら入りたいという顔をしていた。
その反則的なほど可愛い様子に、私の心は一瞬でとろけてしまった。
「はい、今日はここまで」
私は自主的にこの「絵画教室」を終えることにした。
池田はまるで恩赦でも受けたかのように、逃げる兎のごとき速さでシャツを着た。
「あの……お金は……」
彼はもごもごと口ごもる。
「ああ、そうだったわね」
私はバッグから用意していた封筒を取り出した。
「これが報酬よ。池田くん、協力ありがとう」
池田が封筒を受け取り、立ち去ろうとしたその時、私はすっとつま先立ちになり、彼の唇の端に軽くキスをした。
「これはご褒美」
私はウィンクする。
「池田くん、今日はすごく良かったわよ」
池田は完全に固まってしまった。まるで悪党にからかわれた良家の娘のように、どうしていいか分からず私を見つめている。
「なっ……何をするんだ!」
彼は慌ててキスされた場所を覆った。
「俺はそんな、ふしだらな人間じゃない!」
「分かってるわよ」
私は無邪気に瞬きする。
「これは友達同士の感謝の印」
「友達は……しない……」
彼はそれ以上言葉を続けられず、顔は煙が出そうなほど赤くなっていた。
「しないって、何を?」
私はわざと尋ねる。
池田は何も言えず、ただスクールバッグを抱えてドアから飛び出し、その逃げ去る後ろ姿は、これ以上ないほど狼狽していた。
三十分後、私のスマホが鳴った。
銀行からの入金通知メールだ。
『お客様の口座へ20000円の振込がありました』
その直後、池田からのメッセージも届いた。
『神崎さん、お金は返しました。今日のことはなかったことにしてください』
数秒後、また別のメッセージが来た。
『それと、今日のことは誰にも言わないでください』
そして、それは取り消された。
またメッセージが来た。
『あなたのことを怒っているわけでは……ただ……』
取り消し。
『こういうことは恋人同士でするものだ』
秒で取り消し。
『神崎さん、おやすみなさい』
この一連の操作を見て、私は思わず笑い声を上げてしまった。
この天邪鬼な子ったら。心臓が飛び出しそうなほどドキドキしているくせに、クールを装って。
私は返信した。
『池田くん、お金は受け取らないわ。あなたは優秀だし、その報酬に値する。それと……』
わざと数秒間を置いてから、送信した。
『あなたの唇、すごく柔らかかった。次は別のところも試していいかな~』
送信完了と同時に、私はスマホの電源を切った。
このメッセージを見た時の池田の反応を想像して、私はベッドの上でゴロゴロと転げ回らずにはいられなかった。
池田究、今世ではもう逃がさないわよ!









