第21章 所有欲が災いする

晩餐会の数時間前、今野敦史は阿部静香を連れて会社を後にした。

二人がいなくなると、中林真由は全身の力が抜けるのを感じた。

彼女は休暇を取っており、ちょうど退勤前に病院へ寄ることにした。

医者は彼女の足首を念入りに診察し、最終的に一、二週間はベッドで安静にしているのが最善だと告げた。

中林真由は今野敦史の顔を思い浮かべ、かろうじて頷いた。

会社に戻りたくはなかったが、彼女の四半期ボーナスはかなりの額になり、そう簡単には諦められない。

病院の前まで来たところで、彼女は今野敦史からの電話を受けた。阿部静香に似合いのドレスを届けるため、すぐに宴会場へ向かえという内容だった。

中林真由は...

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