第22章 それは彼女一人の

中林真由の動きを見て、今野敦史はわずかに眉をひそめた。

阿部静香は彼の袖を引いた。「今野社長、そろそろ中に入りましょう」

そして、おずおずと中林真由に視線を向ける。「真由さん、ドレスを届けてくださってありがとうございます。ごめんなさい、今、真由さんが歩きにくいことを忘れてて……わざわざ来てもらうなんて、ご迷惑でしたよね」

彼女がわざとそう切り出したのは、中林真由をパーティー会場に入らせたくなかったからだ。

中林真由は入口に来たばかりだというのに、すでにどこの馬の骨とも知れない男を引っかけている。阿部静香は、彼女が人混みの中で立ち回る姿など見たくもなかった。

中林真由がいる場所では、...

ログインして続きを読む