第255章 妥協

上村賢人は身じろぎもせず座席に座っていたが、胸中にはやるせない思いが渦巻いていた。

「今野社長。中林秘書の母親が、今日心停止を起こされたそうです。蘇生措置は行われましたが、現在は人工心肺装置でかろうじて命をつないでいる状態で……」

「医師の話では、直ちに心臓移植が必要だそうですが、適合するドナーが見つからないため、人工心臓への置換しか道はないと」

長年同僚としてやってきた上村賢人には、中林真由のことがよく分かっていた。

よほどの大事でない限り、あの冷静な彼女があんなに取り乱すことなどない。

事態は切迫している。恐らく次の瞬間には、中林真由の母親が亡くなってもおかしくない状況なのだろ...

ログインして続きを読む