第272章 契約

使い捨てにする気か?

中林真由は少し後ろめたさを感じたが、実際、そう考えていた。

義理を欠く行為だとは分かっている。だが、他にどうしろと言うのか?

今野敦史さえいなければ、母さんの心臓移植の機会が奪われることもなく、こんな泥沼に嵌まることもなかったはずだ。

そう考えると、阿部静香とその母親の醜悪な表情が脳裏をよぎり、胸が締めつけられるように苦しくなる。

黙り込む彼女を見て、今野敦史は鼻を鳴らした。

「リーウェイとの契約は破棄していい。持って行った案件の歩合は、高橋大和がきっちり払うはずだ。俺がいる限り、奴に拒否権はない」

真由は唇を噛みしめた。これは、彼の手元に戻れという命令だ...

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