第282章 もっといい子に

白川有香の説明を待つまでもなく、中林真由には大体の事情が察せられた。

もし縁談の相手が江口海だったなら、今頃二人の子供がそこらを走り回っていてもおかしくないはずだ。

白川有香は江口海こそが自分の婚約者だと思い込んでいたが、実際、彼は弟の代理として謝罪に訪れたに過ぎなかったのだ。

弟もまた、家が決めた政略結婚に納得がいかず、黒川家への訪問をすっぽかした。それは黒川家の顔に泥を塗る行為に他ならず、江口海が謝罪に出向く必要があったわけだ。

江口家には五人の息子がいる。彼女の相手は、江口海ではなかった。

しかし当時の白川有香は、江口海だけを一心に思い定めてしまった。

「あの人はあの時、謝...

ログインして続きを読む