第289章 もう愛さない

今野敦史は眉をひそめ、無言を貫いた。

黒川有香は力なく笑った。

「言わなくてもわかってるわ。世間が私をどう見ているか……江口海のただの愛人、いつでも捨てられる存在、妻の座なんて夢のまた夢。金目当ての日陰者で、尊敬に値しないクズ……でしょ?」

その声は物悲しく、同時にどこか凪いでいて、まるで全てを悟ってしまったかのようだった。

「他人が私を見る目、それはそのまま中林真由に向けられる目でもあるの。世間から見れば、私たちの本質は同じ。彼女自身も、そう思っているはずよ」

「長年尽くしてきたけれど、私の情熱はもう燃え尽きたわ。江口海への愛もね。だから私は去ったの」

「中林真由もあなたに十年...

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