第290章 また転職

会場に入ると、中林真由の視線は無意識に誰かを探していた。

理由は判然としないが、胸の奥になんとも言えないざわつきを感じていたからだ。

「今野敦史を探しているのか?」

小島文彦が不意に顔を寄せ、声を潜めてくる。

中林真由は首を振り、近くのテーブルからワイングラスを手に取った。

「いいえ」

「探さなくても、彼は間違いなく来るよ。もうすぐ到着するはずだ」

小島文彦は自分のグラスを軽く彼女のグラスに合わせた。

「田丸婆さんを探しているんです。谷口社長から直々にお祝いを申し上げるよう言付かっていますので。それと、本人が参れないことへのお詫びも」

中林真由は静かに答える。

彼女は酒に...

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